関西はうどんばっかり食べている?いえいえそんな事はありません。
素うどんとかけそば
本来は蒲鉾の薄切り等も入っていないのが正統派
大阪では加薬(かやく)がのせられておらず、刻みネギなどだけがのったうどんの地方の呼び名である「かけうどん」のことを「素うどん(すうどん)」と呼びます。ごちゃごちゃと具が無いので「素(す)」な訳で、音から想像して酢が入っていると思っていた方は残念ですが、いくら大阪人でもそんな悪食はしません。逆に関東の呼び回しを知らずに「かけうどん」を注文して「あんかけ」や「山かけ」を予想した方はモノが運ばれて来て残念な思いをします。
かけうどん・そばの「かけ」とは麺の上から出汁ツユをかけることの意味ですので、本来であればネギなど薬味も無いのが正統派なのかもしれません。
どちらも立ち食い等ではあえて「素うどん」「かけそば」等と書かずにさらりと「うどん」「そば」としか書いていません。「かけそば」に相当する「素そば」ですが、逆にこちらはかなり少数派のようで、メニューで見かける事はあまりありません。「そば」では無い場合に「かけそば」と表記される事の方が多い様です。私自身は「素そば」はかなり違和感があります。単に「うどん」「そば」と書かれているものを目にしている事もあるせいだと思います。
大阪のうどん・そば店では天かす(揚げ玉)を入れ放題の店が多く、関東で言う所の「たぬき」に相当するうどん・そばはありません。お客の手元で「たぬき」状態になるため相当するメニューはありません。
さて、意外と多い蕎麦屋。大阪の人、いや関西人!町中にある麺処には「うどん」が目に付くかも知れませんが「生蕎麦」と書かれた蕎麦屋の看板が目に付きませんか?一度確認してみてください。
ちなみにiタウンページで大阪府大阪市の中から業種名「そば」のカテゴリーで検索するとうどん店と重複している登録もあると思われますが、以下のような結果が得られました(2005年12月26日現在)。
そば店(867)、うどん・そば店(113)、信州そば店(26)、立ち食いそば店(26)、立ち食いうどん・そば店(14)、合計1046件。信州そばを除くと1020件。
これを業種名「うどん」のカテゴリーで検索すると、
うどん店(1019)、讃岐うどん店(115) 、うどん・そば店(113)、立ち食いうどん店(27) 、立ち食いうどん・そば店(14) 、いなにわうどん店(6)、味噌煮込うどん店(2) 、合計1296件。
このうち、いなにわうどん、味噌煮込みうどんを除いても1288件。さらに讃岐うどんを除くと1173件と、ほぼ匹敵しています。
微妙にうどん屋の名を掲げる、もしくは含まれる店の方が多いようですが、決してうどんの店ばかりではなく思った以上にそば屋が多い事が判って頂けたでしょうか。ま、そば屋でもうどんは出しているので実質はうどんを食べる事のできる店の方が多いと言えなくもありません。ただし名前の順序は大阪では「うどん・そば」と表記するのに対して関東では「そば・うどん」と逆になる場合が多いようです。
もちろん東西関係なくうどん店では「うどん・そば」と表記していますし、そば店では「そば・うどん」と表記します。
大晦日に食べるそばですが、いまや「年越しそば」という表現が一般的になってしまいましたが、大阪では「晦(つごもり)そば」と呼び、晦日(みそか)特に大晦日に食べるものをこのように呼んでいました。とうぜんうどんバージョンの「晦うどん」もありました。
ちなみに落語の「時そば」は上方の「時うどん」が江戸バージョンとして移植されたものです。そばも元々はうどんのように細長く切った「そば切り」になる前は現在のような麺としてのそばは成立していません。うどんの方が歴史が古いのです。
[参考資料]
牧村史陽編 講談社学術文庫 大阪ことば事典第13刷
スウドン【素うどん】(名)の項を参照
NTT番号情報株式会社 「iタウンページ」サイトより検索結果
社団法人農山漁村文化協会 「日本の生活全集 大阪編集委員会」編 日本の食生活全集27
聞き書 大阪の食事 1991年2月20日第1刷
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