なにやら物騒なタイトルですが、そんなに怖くありませんよ。
宇宙を支配する6つの数 サイエンス・マスターズ 16
マーティン・リース著 林 一訳 草思社刊
原題「Just Six Numbers: The Deep Forces That Shape the Universe」
2001年10月1日 第1刷
ISBN4-7942-1076-0
当初、想像していたのはプランク定数(h)や万有引力定数(G)かと思って、本を開いたのですが想像以上に自分が浅はかなのを思い知らされました。
原題からは支配するというより形作る意味が汲み取れるのでその通りの「数」が対象になります。
著者は天文学者な事もあり、天文物理に関する数が取り上げられている点が興味深い点です。
N:電磁気力と重力の強さの比(≒1036)
ε:核融合効率(=0.007)
Ω:膨張の速度を決める宇宙の密度(=1?、=0.3?)
λ:反重力の強さを表す(≒0?)
Q:ゆらぎを決める数(≒10-5)
D:空間の次元の数(=3)
どの数も非常に興味深い対象を示してくれます。
宇宙物理学的に重要な数が取り上げられているのは著者が宇宙論を専門とする天文学者であることに起因すると思えますが、そこから得られる考察はSF的といえます。
われわれの宇宙が「たまたま神の意思」でこの値に調整されていたとしたら、別の値をとりうる別の宇宙が存在するのではないか?
すなわち多宇宙(multiverse)があるのではないかという予想を導き出します。
多少条件の違う別の宇宙、すなわちパラレルワールドが無数に存在するのではないかということです。
「別々のビッグバンから発生して連結の無い時空の領域となっていく多数の宇宙が生み出されている」
p.269より引用
この記述が示すようにわれわれの宇宙は唯一ではなく他の無数の微妙に条件の違う宇宙が無限に存在する。並行宇宙(パラレルワールド)ともいえる、あらゆる条件の宇宙が存在し、たまたまその中のひとつであるという結果を導き出しています。
たまたま「うまく調整」された結果、存在する宇宙にわれわれが存在するだけなのか「まずい調整」をされた結果がわれわれの宇宙なのか判断に苦しみます。こればかりは他のレシピで生成された宇宙を直接観察するしかありません。またこれらの宇宙間の相互作用によって生み出される結果がどのようになるかはアシモフのSFである「神々自身」に興味深い考察が見られます。
実際に相互の交流ができたとすると、その交流自身が破滅を導くのか発展を導くのかは誰にもわかりません。
この宇宙、なぜこうなったかを今一度考えさせられる一冊でした。
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