以前に、トランスでスピーカーを鳴らすタイプのミニラジオを作りましたが、今度はトランスレスで。
回路実験中
TO-92のパッケージは左からLMF501T、2SC1815Y、2SA817GR
電源は1.5VをPICツールボックスから供給
出力トランスを使ってスピーカーを鳴らすのはお手軽なのですが、トランスというのは以外と大きい部品なのです。また、どうしても重くなってしまい、出力トランス(ST-32)だけで13gあります。
たかが13gと侮るなかれ。流行の充電池eneloop単3型1本で重い電池だと感じますが、これで27gあります(メーカー公称値)。つまり電池の重さの半分ぐらいあるわけで、ポータブル機器の中で単一部品でで重量を占める事の多い電池に次いで重たいわけです。スピーカーなども強力磁石と磁気シールドのための鉄がありますのでこちらも実は相当重たい部品です。
重い上に固まりで場所を取るでかい部品だわ、周波数特性は良く無くなるわと、ダイレクト駆動に比べるとあまり良い事がありません。
大電流で駆動できるドライバ段のトランジスタが手軽に使えるようになり、トランス出力は真空管アンプぐらいしかすぐには思い付かず、ダイレクトにスピーカー駆動する回路がほとんどとなりました。大出力アンプでは低オン抵抗のMOS-FETなども用いられるようになったこともあり、現在のスピーカーを駆動するアンプの設計では出力段にトランスを採用する回路はほとんどないのではないでしょうか。
という事で、さらに小型化を目指して、ミニラジオで使用していたタカチのSW95に入る大きさを目指してみます。
もちろん、電源は乾電池1本の1.5Vで動作する事が前提です。
どうしてくれようかと悩んでいたところ、ぴったりの回路が図書館で子供向けの書架にある電子工作関連本で見つかりました。
製作した回路を含む製作内容は以下の書籍に掲載されていますので、そちらをご参照ください。
水谷紀雄著 ポプラ社刊
やさしい電子工作4 音のでる電子工作
p.30〜 デザイン自由なAMラジオ
LMF501Tの出力そのままではとてもスピーカーを駆動する電流は取り出せません。そこで低周波増幅段でスピーカを鳴らせるくらいの電流を取り出さなければ鳴りません。トランジスタの数を増やさずに増幅度を劇的に上げるために一番手っ取り早いのはダーリントン接続の増幅回路です。
さすがに通常のダーリントン接続を行うとVBEの0.6V×2で1.2Vほどがトランジスタの増幅段で取られてしまうため、電源電圧1.5Vでは辛いことからPNPとNPNの組み合わせとなるインバーテッドダーリントン接続を用いて増幅段のトランジスタの飽和電圧を抑えて増幅する回路でした。
回路アップ
部品点数は大変少ない
1-IC・2-TR・4-コンデンサー・ 3-抵抗のほかはバリコンとバーアンテナ、スピーカー
これだけでスピーカーがトランスレスで鳴らせる
低周波増幅は2SC1815Yと2SA817のインバーテッドダーリントン増幅です。
2SA817はオーディオ機器のドライバ段用のトランジスタで、2SA1015(-150mA)に比べると最大定格で-300mAと倍の電流まで駆動出来るためスピーカーを大音量で流さない限り大丈夫そうです(ディレーティングは必要ですが)。
その他2SA1296(東芝)や2SB561なども利用可能と思います。VCE(sat)がなるべく低く、コレクタ電流Icが-300mA、コレクタ損失Pcが600mWより大きければ問題なく利用できるでしょう。PNPタイプのトランジスタはNPNタイプに比べて特性範囲や品種・入手性が限られているので辛い所です。
とりあえず、ブレッドボードで基本的な動作をチェックしてみました。
ボリュームを最大にせずとも、それなりの実用に堪え得る音量で鳴らすことができます。もちろん、周囲がうるさい部屋ではさすがに無理な音量です。
感度や選択度は高周波増幅段を受け持つLMF501Tに依る所が大きいので、いままでこのICを使ったラジオと大差はありません。選局のバリコンの位置により一部発振をおこす箇所があり、バリコンやバーアンテナとの配線が長い事に起因すると思われますが、実際に基板に組上げる前にどこで発振しているのかをシグナルトレーサーで確認する予定です。
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