敬愛すべき、たなかじゅん氏の初めての単行本です。
たなかじゅん著 ヤングサンデーコミックス 小学館刊
わかってまんがな
1992年1月5日 初版第1刷発行
ISBN4-09-151331-X
※現在版元在庫もなく出版元での重版の予定はありません
いきなり新本での入手不可の書籍で申し訳ありません。
しかしながらこれは現在、ナッちゃんを連載中のたなかじゅん氏の初めての単行本作品というところで取り上げさせてもらいました。今回は元ネタとなった風景等を現在と見比べてみようと言う試みなのでかなり長くなっていますがご容赦ください。
また、引用を快諾していただいたたなかじゅん氏には大変感謝しております。
梅田曽根崎界隈
建物はともかく広告類は面影すらありません。
・第一勧業銀行 → 東京スター銀行
・メルシャンワイン → 日本土地建物
・旭屋書店の広告 → 廃止
・エスバイエルの広告(National/Panasonic) → エスバイエルが不正会計問題で落ち込み・本社梅田ビル売却
・TDK(一流メーカー) → 武富士(サラ金)
と、まあ、散々なものです。関西の経済の様子を示しているといっても過言ではないでしょう。
左端の建物は大阪府警曽根崎署、その手前にある銀色の怪しい物体は梅田換気塔です。
大黒ふとん店
ほぼ昔と変わっていません。漫画のほうはクーラーの外機や壁の補修跡などが描かれていますが、実際は塗り壁ではなくタイル壁です。
店の雰囲気は漫画の状態と変わりません。備え付けの常備品と化した店番の方がいらっしゃいます。もちろんちゃんと布団も売っています。
淀川河川敷
大阪工業大学は敷地が狭く運動場というものを自前で持っていませんでした。屋上プール付きの体育館はあるのですがいわゆるグラウンドというものはなく、大阪市から河川敷を借りて使用しています。付属の高校である大阪工業大学付属高校はラグビーの強豪であり、高校と大学の共用で利用しており、この河川敷で練習をしていたわけです。
ラグビーのゴールポストや、サッカーゴールなどが写っていますが、サッカーゴールは淀川が増水して河川敷まで水があふれてくると流されてしまい新調しなければならないというなんだかなあの施設です。
遠景に見える橋は豊里大橋で、左側の川向こうは大阪市東淀川区、右側は大阪市旭区方面となります。
作品中に描かれている「アッ!あぶない」の看板は、すでに撤去されてしまっており、この味のある注意看板は見ることができません。残念!
バナナホール
某IT企業(イーディーコントライブ、現ヤマト)に買収されその去就を見守る状態の施設です。
先般、明け渡しに対する抗告が却下され、今後の動向が注目されるライブホールです。ここから巣立ったアーティストも多く、席数の少なさがネックでありメリットでもあった貴重な小屋だったのですが、どうなるかはまったく判らない状態です。
作品中でハバナホール(Habana Hall)となっており、きれいな外壁ですが、当時のバナナホールは描かれていたのと同じような状態でした。しかし、近年に落書きとも言えぬスプレー画が描かれてロックというよりパンクのような感じになってしまっています。個人的にはこれは無いほうがカッコイイと思うのですが。
かどや食堂
チラとしか描かれていませんが、角にある「かどや」です。
千林の今市商店街を抜けた先の公園前の角にあり、屋号は「公園前かどや」が元の名称です。漫画では公園前の文字が外されています。
千林界隈はバイク通学だったこともあり、あまり散策・徘徊をしたことが無く、今回改めてじっくりと回って収めました。私の学生時分はそんなものに目もくれていなかったと言う事ですね。
露天神社(お初天神)
露天神社から見た駅前第3ビル
漫画と同じアングルは見ている樹木が育って大きくなり無理でした。拝殿の後方の樹木も漫画の頃から大きく育っているのが判ります。時代が流れている証拠です。ビルは大阪駅前第3ビルなのですが、特徴のある外装は描かれていません。
近松門左衛門の人形浄瑠璃の戯作で、実話を元に描かれた「曽根崎心中」のモデルとなったヒロイン「お初」とその相手だった「徳兵衛」のブロンズ像が境内にあります。
神社の祭神は少彦名大神と菅原道真ですが、いまや元の露天神社という名称よりお初天神のほうが通りがよい状態になってしまいました。商店街が隣接しているとはいえ梅田のオフィス街の真っ只中にあることから、昼休み時はサラリーマンの方々の往来も多くあるのですが、お参りする人は逆に少ないようです。
ロフト梅田店
HEPナビオ(ナビオ阪急)
ともに茶屋町や曽根崎界隈のランドマークともいえる建物です。
ナビオ阪急の左側に写っている観覧車は掲載当時は無かったHEPファイブの観覧車です。さらに、このナビオ阪急ですが、10月をもって閉館となり、シネコンではなく映画館のみの営業に切り替わります。今月一杯は店舗のほうは閉館セールをやっているそうですので、掘り出し物が見つかるかもしれません。
大黒君たちの住んでいる街並は千林と鶴橋が混在しています。
鶴橋駅
ミヨシ正宗の看板は正宗屋になっていた
その他、大阪工業大学から地下鉄千林大宮への途中の商店街や街路、千林商店街近辺などの風景がありますが、なかなか特定できずに今回は掲載を断念致しました。
今回の記事化に際して、多大なるご協力いただいた、たなかじゅん氏に改めて感謝致します。
[参考・引用文献]
たなかじゅん著 わかってまんがな 小学館刊
作品中から風景のコマを引用させていただきました。