今や超有名な著者による科学と神(や、疑似科学など非科学)との関係をまとめあげたものです。
リチャード・ドーキンス著 垂水雄二訳 早川書房刊
悪魔に仕える牧師〜なぜ科学は「神」を必要としないのか
2004年4月20日 初版印刷
2004年4月30日 初版発行
原題:
A DEVIL'S CHAPLAIN
虹の解体、利己的な遺伝子など超ベストセラーを飛ばすリチャード・ドーキンスの25年間にわたる発表された文章からテーマを抽出して集大成したものがこの本です。題名そのものはチャールズ・ダーウィンのことばに基づいています。
「悪魔に仕える牧師なら、ぎくしゃくし、無駄が多く、無様な、低劣でおそろしいばかりに冷酷な自然の所業について、どんな本を書いたことだろう」
(p.22より引用)
自然淘汰という試行錯誤は全然エレガントでもなんでもなく、ぎくしゃくして、無駄が多くて、無様な事になることが予測でき、無駄については疑問の余地がないとドーキンスは言及しています。まさに、そのとおりで、自然淘汰の結果得られた我々を含めた生物などは、システムとしてもぐちゃぐちゃで一貫性がありません。
また、科学の持つダブルスタンダードを極力廃し、一貫性を保とうという著者の姿勢が記されています。
特にこの副題に現れているように、科学とそれに携わる人間の倫理などについて厳しい見方と指摘をしています。「科学は宗教ではない」という姿勢です。
攻撃的な表現も多くあり、「疑似科学的な妄言」とか「奇術師〜職業的な錯覚利用者」、「「代替」ないし「補完」医療というハゲワシが旋回を始める」、「宗教こそ、歴史において最も扇動的に敵というレッテルをはりつけてる装置だといっても過言ではない」などなど。
宗教が科学に横槍を入れる「インテリジェント・デザイン」などは特に槍玉に挙げられています。
創造論的宇宙論など、けちょんけちょんです。
宗教と科学の相容れない部分に光を当てて浮き彫りにし、科学の正体、宗教の正体をさらけ出させて読者にどちらが正しいかの判断材料を示している、といった印象を受ける本でした。
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