学校法人ホンダ学園、ホンダ テクニカルカレッジ 関西校のオープンキャンパスにお邪魔しました。
8時間耐久チームのピットデモ
学内で行われている活動の1つに鈴鹿8時間耐久ロードレースへの参加・出場があります。
先生方が指導に当たっているとはいえ、ライダー以外の実際の活動は全て学生。ピット作業、車体熟成も含めて全員が学生のチームであり、相当な覚悟と実技力を必要とされます。
車体作りこみ中
学内のものづくりエリアを使用して、車体の整備などを含めて行っていました。
考え、手を動かして作り、失敗をして学ぶという貴重な体験を学校生活の中で体験できて身に付けることができるのはうらやましい限りです。
授業風景(2号館2F実習場)
ここでは小さな4気筒エンジンを分解・組立していた
当日は土曜日の本来ならお休みとなる日に登校・授業ということで、見学会にあわせたシフトでなんだか学生さんには申し訳なく思ってしまいます。
各授業の先生や、校長・教頭など含めた先生全てが本田技術研究所からいらっしゃっている方ばかりなのだそうです。
現役バリバリで活躍されていた方が引き抜かれてこちらの講師として学生に教えるという、現場実地主義そのもの。また、各分野の「神様」みたいな人がゴロゴロしており、スターのような先生から直接教えを請う事のできる学生さん方が大変うらやましく思います。
たとえば、アイルトン・セナのエンジンメカニック担当で、その先生となっている方のバルブ摺り合わせしたエンジンでなければセナ選手は出場しないと本人が言い切るぐらいの人だったりします。
今回の学校見学では、自動車研究開発科(3年制)の課程に進路希望のコースで案内頂きましたが、研究開発科での独自の取組に「ものづくり」があります。その授業の一環としてF-SAE(Formula Society of Automotive Engineers)への参加というものがあります。これはアメリカ自動車技術会が主催する自動車製作のコンペ競技でして、タイヤをカウルで覆わないオープンコックピットであるフォーミュラースタイルの車をレギュレーションに則って開発・製作し、競い合います。エンジンは610cc以下の4ストロークエンジンとなっています。
実車走行デモ
通常のレースと異なり、参加団体を1つの企業として模しており、競技車両の設計・製作、走行性能を競うだけではなく、プレゼンテーション審査(企業への売り込み)、コスト審査(製作費用も競技対象で総額$30,000以下と定められています)、デザイン審査(カッコいい車を売り込まなければなりません)などの静的審査と、0〜75mのタイムを競うアクセラレーション審査、スキッドパッド審査、オートクロス審査、エンデュランス審査などの動的性能の他、エコノミー審査(燃費を競う)といった、現在の自動車造りに遭遇するであろう開発と全体的なマネジメント能力まで審査の対象になります。
下の写真では車体にメーカ名などが貼られていますが、これは実際のレースと同じくスポンサード企業の名前を表記しています。加工費を学生向けに融通して頂いたり(価格交渉はもちろん学生の仕事です)、解析ソフトウェなどの供与をして頂いたりと有形無形のご協力を頂いた企業の名前なのです。
本年度の競技参加車両
手前は単気筒自然吸気、奥が4気筒ターボ付き
ターボユニット
奥に見えているかたつむりがターボユニット
ワゴンRのものを流用したそうだ
ここで、主体になるのは学生であり、講師陣は直接設計や仕様に対してアドバイスしてはならない規則であるため、けっこうもどかしいそうです。また、実際に失敗させてどう改善するかという手法を学ぶことも必要との事でした。
このあたりは故本田宗一郎のレースに臨む考え方が受け継がれているのではないかと感じます。負けたときの原因はみんな必死で検討しますが、勝った時もなぜ買ったのか分析しろとの思考方法を教えられるのではないでしょうか。結果オーライではダメなのです。
研究開発科ではF-SAEを始めとして整備科と異なり、もの作り徹底して鍛えられます。
そのため、本年度が初めての卒業生を排出したにもかかわらず、このご時世にあっても就職率100%だそうです。恐るべしホンダ学園。
模擬ショールーム(1号館2F CSホール)
実地に即した授業内容ということで、このようなショールムを模した教室もあります。セールスとして就職する学生さんの場合は、こんな教室で授業を実地のように受ける事になります。
また、学校来場者にとっても二輪・四輪を含めたホンダのショールームともなっている所が面白い所ですね。
学内図書館(2号館3F)
技術書だけでなくホンダ関連の書籍の蔵書は日本一とのこと
食堂
学生向けなのでご飯大盛りも同じ値段だそうだ
ただし、我々は確実に成人病になりそう...
ちなみにH-TEC(W)カレー【トンカツ】が1037kcal、大盛りだと...脂汗
実習場以外にもいろいろな施設が充実しています。
ホンダ関連の書籍であれば日本一の蔵書を誇る図書館。ココ以外では絶対に置いていない書誌もあるそうです。また、食堂は学生の人数が収まりきらないためシフト制のようでした。選択コースなどで食事の時間帯が決められているのでしょう。時間を守って外で待機している学生の列が印象的でした。
学生向けメニューとあって、とにかくボリューム大。ご飯は大盛りにしてもらっても同じ値段。
カレーなどは軒並み大盛りの学生ばかりで、横から見るとご飯の小山ができたカレーがあちらこちらに。まるでCoCo壱番屋でごはん1000gを注文した感じです。
我々「ええ年」をした連中が同じ量を食べると確実に成人病やメタボまっしぐらであることは間違いありません(笑)。
他にもウェブ上には掲載がありませんが、バスケットコートなどもあり自動車系以外の運動部系同好会のほか、文科系の同好会もあり課外の活動も盛んだそうです。
今回の学校見学会の目玉イベントの1つがF1エンジンの始動デモ。
教室の片隅に置かれているF1マシン
デモを屋外ですると近隣から文句が出そうなくらい大音量
過去にホンダがF1に参戦していた頃のエンジンを動態保存されていて、実際にエンジンを始動して感じてもらうイベントです。
アイドリングで暖気したのち、9,000rpmと上げると独特のエキゾーストノートが聞こえ始めます。テレビ中継で聞こえるアレです。さらに16,000rpmまで回転を上げてデモ。実際のF1サウンドを間近で体験できます。実戦ではピットクルーなどが防音のプロテクターを付けていますが、無い状態ではとてもではありませんが難聴確実な大音量です。
しかしながら9,000rpmのエンジン音、さらに高出力時のエンジン音を体験すると言葉では表現しきれないものがあり、パワーを身体で感じるというのが正直な感想。圧倒的な迫力を体験できます。
エンジン自体は1983〜1992年まで参戦していた時のかなり古い時のエンジンだそうで、実際に次回始動できるかどうかはかなり怪しいとか。V12気筒のようですのでRA121Eではないでしょうか。
今回見せて頂いたホンダ学園、研究開発科のオープンキャンパスでお世話になった校長・教頭先生を初めとして講師の方々のホンダイズム。さらに徹底したコンセプトに創学者である本田宗一郎の「人に愛され、信頼される技術者の育成を通じ、社会に貢献する」という熱いメッセージがまだまだ生きており、受け継がれている事を感じました。
また、礼儀正しい行動を取るという部分でも大変成果をあげておられており、見学で回った教室や施設、通路などですれ違う学生がみな「いらっしゃいませ」とか「こんにちは」といった挨拶を元気よくかけてきてくれました。
学校見学会という入学者取得のイベントにお邪魔したにもかかわらず、丁寧なご対応頂きました校長・教頭先生をはじめ、講師の方々や関係者の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
追記:
デモで始動しているエンジンですが、V12気筒の後期型エンジンではありますが、プロトタイプとの事で型式を振られた実走行マシン向けエンジンではないそうです。
となると、車体もプロトタイプ?と、気になるところです。