読んでいてなにか違うとおもっていたらこれでした。
畑野貴哉著 リットーミュージック刊
土日で作るオリジナル・エフェクター
2003年2月20日初版発行
ISBN4-8546-0867-8
知る人ぞ知る自作エフェクター界のカリスマ、畑野貴哉氏を知らしめた「サウンド&レコーディングマガジン」に連載されていた全52回の記事のうち製作記事31回から厳選した12回分をその後のフォローを含めて製作記事として再録したのがこの書籍です。
ほとんどカリスマというか信仰の対象としているとしか思えないような人たちがいますので、なんともなのですが、オーディオの世界ですので主観が全てです。「イイ音」が絶対的であるかのごとく、イイ鳴りをするエフェクターの製作記事です。たぶん自作エフェクターの聖書でしょう。
主となるのはいわゆるヴィンテージもの。昔の市販エフェクターの回路を踏襲して再現・改良を施したものを自分たちで作ってしまおうというわけです。
そこで繰り広げられる内容が、このゲルマトランジスターがとか、このヴィンテージなコンデンサーがとか、ビンテージワイヤーで決まりとかなのです。
どうも読んでいて、なんか違和感があったのですが、ハタと気づきました。
グルメ本と同じなのです。
この素材がどうのとか、調理法でこの手順が必要ですとか、この調味料が決め手ですとかと同類なのかと(笑)。
そもそもの企画としてヴィンテージな機材の再現を目指している訳なので、部品入手姓が非常に悪いものをわざわざ指定して製作記事にしているため、どこそこの何々が味の決め手みたいな感覚と同じに感じてしまった訳です。
評価の選定基準が「音が細い」「艶と伸び」「硬いワイヤーは音も硬め」などという表現で書かれており、ほとんど宗教と言った気もします。部品もどこの店で売っているどこ其処のメーカーのこの部品という指定が入り、それがなければこの音は再現できないそうです。
確かに音響機器の場合、部品や線材を変更すると主観的な音が変わるときが多くあります。部品の電気特性が変わる事により結果として音となるべき周波数特性が変わるからでしょう。
ただし、Hi-Fiを評価基準にするのでない場合、どの音が「良い音」かというのは主観によるわけですから、当然、評価する個人によって大きく変わる事になります。食材の指定が入手先を含めて指定されてるグルメ本と同じように部品の入手先が秋葉原の部品店舗を指定で、その店舗を回るための聖地巡礼マップ付き。
指定の部品で製作しても、良い音でないと感じた場合、味音痴と同じでエフェクター音痴として烙印を押されてしまうのではないかという危惧がよぎりました。
発行から相当年数が経っているため、指定の部品を入手するのは秋葉原でも困難さが伴いますし、ましてや日本橋を含めて地方都市であれば、通販以外で見つける事が出来なければ、ほぼ再現は無理です。
まあ、半田の種類まで(Kester44指定とか)でないだけましでしょうか。
面白く拝見はさせていただきましたが、制作意欲が沸かなかったのは、私がグルメ本を見て食べに行こうとあまり思わない性分だったのかもしれません。
と、こんな記事を書くときっと文句が出るんだろうなあ。
車選びの本も同じような書き方の本がありますね。
執筆者の方は、その車に何日乗ってんでしょうね~?
不思議だなぁ。
主観的ならそれでも良いのですが、妙に権威が付いたりすると実は主観的な評価なのに客観的な絶対評価に勘違いされやすいのが世の常です。もっともロードテストのように長期間利用した上でのいろいろな評価・批評なら納得もするのでしょうが、ちょっと利用しただけで全て判ったのごとく批評されると、本当に「なにがわかる?」と聞き返したくなりますよね。
音系の場合の「心地良い音」の範囲なんて、個人差がありまくりのはずなのですが。