おすすめか、おすすめでないか、それが問題です。
星野之宣著 J.P.ホーガン原作 小学館ビックコミック刊
星を継ぐもの 01
2011年7月5日 初版第1刷発行
ISBN978-4-09-18388-9
昨年(2010年7月)に無くなった原作者であるジェームス・P・ホーガン(James Patrick Hogan)の一周忌のごとく刊行されました。
作画は日本のハードSF漫画の大御所とも言える星野之宣。
以前にもホーガン作品である「未来の二つの顔」(創元SF文庫刊)をベースとして同名の作品を描いていますが、今回も野心的な挑戦としてホーガン作品を漫画化しています。
J.P.ホーガン著 池 央耿訳 創元SF文庫刊
星を継ぐもの
1980年5月23日 初版
ISBN4-488-66301-X
原作本はこちらの東京創元社から創元SF文庫として刊行されており、現在は版を重ねて80版まで発行されているロングセラーでありベストセラーとも言える名作SFです。
さて、ここからはネタばれになるので差し障りのある方は読み飛ばしていただいても結構なのですが、読む前のレビューと思って読んでいただければ手を出すかどうかの判断の一助となれば幸いだと思っています。
前回の「未来の二つの顔」でも原作を逸脱した変更をしていたのですが、その時はエンディングが変更されていただけで、ほぼ原作に忠実に描かれていました。もちろん、ページ数の関係もありますので、かなりはしょられている事は否めませんが、ちょっとがっかりしていたのです。
今回の「星を継ぐもの」では原作をなぞる事はおろか、ストーリー展開もプロットも変更して独自に描かれています。星野節だと思って読めば楽しめるのかも知れませんが。ホーガンファンとするとかなり許せない内容となっています。
主な違いを列挙しますと・・・
星野之宣著 J.P.ホーガン原作 小学館ビックコミック刊
星を継ぐもの 01
2011年7月5日 初版第1刷発行
ISBN978-4-09-18388-9
昨年(2010年7月)に無くなった原作者であるジェームス・P・ホーガン(James Patrick Hogan)の一周忌のごとく刊行されました。
作画は日本のハードSF漫画の大御所とも言える星野之宣。
以前にもホーガン作品である「未来の二つの顔」(創元SF文庫刊)をベースとして同名の作品を描いていますが、今回も野心的な挑戦としてホーガン作品を漫画化しています。
J.P.ホーガン著 池 央耿訳 創元SF文庫刊
星を継ぐもの
1980年5月23日 初版
ISBN4-488-66301-X
原作本はこちらの東京創元社から創元SF文庫として刊行されており、現在は版を重ねて80版まで発行されているロングセラーでありベストセラーとも言える名作SFです。
さて、ここからはネタばれになるので差し障りのある方は読み飛ばしていただいても結構なのですが、読む前のレビューと思って読んでいただければ手を出すかどうかの判断の一助となれば幸いだと思っています。
前回の「未来の二つの顔」でも原作を逸脱した変更をしていたのですが、その時はエンディングが変更されていただけで、ほぼ原作に忠実に描かれていました。もちろん、ページ数の関係もありますので、かなりはしょられている事は否めませんが、ちょっとがっかりしていたのです。
今回の「星を継ぐもの」では原作をなぞる事はおろか、ストーリー展開もプロットも変更して独自に描かれています。星野節だと思って読めば楽しめるのかも知れませんが。ホーガンファンとするとかなり許せない内容となっています。
主な違いを列挙しますと・・・
- グレッグ・コードウェルが女性に
- 国連宇宙軍(UNSA)の本部長であるグレッグ・コードウェルが男性ではなく女性になってしまった。原作では「彼」と明記されている。
- ハント博士登場シーンの行き先が違う
- ハント博士の呼び出された先がUNSAヒューストンではなくUNSAニューヨークになっている。原作ではトライマグニスコープの共同開発者であるロブ・グレイと同行となっており、IDCC本部からUNSAヒューストンへ二人連れ立っての移動なのだが、ハント博士単独で訪問している。
- チャーリーって誰?
- 発見された遺体であるチャーリーの命名が隊員のボーイフレンドに似ていたことから付けられたとなっているが、本来は架空の人物を示す場合に使われる仮名としてのチャーリーである。日本の「山田太郎」と同じで特定人物を指しているものではない。
- 調査場所が違う
- 原作ではチャーリーは地球(ウェストウッド生物学研究所)に運ばれてから詳細調査に掛けれたのだが月で行われている。当然ながらハント博士も月に行ってしまっている。このおかげで、このあとのストーリーがどんどん原作とかけ離れてゆく。
- 標本消失の設定
- チャーリーがハント博士の調査開始直後に月の調査施設において事故?で消失してしまっている。原作ではずっと調査が継続していて詳細がどんどん明らかになってゆく。
- 月の遺構発見の経緯
- 月の埋もれた宇宙人の遺構を見つけるのにトライマグニスコープが活躍してしまった。これはハント博士が月に行ったことに引きずられての設定だろう。原作ではトライマグニスコープは地球にずっとあり、遺構発見は月の調査隊のエコーによる発見だった。
- グループLを無視
- ハント博士が木星へ向かうまで、特命機関としてのグループLの活躍などの諸処の伏線がばっさりと削除され話が飛ぶ。この間は本の1/3ぐらいあるので、原作を読んでいる人は何がなんだかわからなくなる。
- ジェヴレンがいきなり登場
- 謎の組織「国際平和委員会」が登場。これはこの巻の原作には一切設定が無い上、横槍を入れてチャーリーの調査を強引に引き継いでしまっている。原作ではハント博士らが長期間専任で調査にあたっていた。ジェヴレンの存在が早くも登場しているが・・・
- 続編のキャラクターがいきなり登場
- ニールス・スヴェレンセンがすでに初めから登場しているが、実際はシリーズ3作目の「巨人たちの星」で登場する。
- ガニメデの地球外生命体の年代が違う
- ガニメデで発見された宇宙人の年代が100万年前となっているが、原作では2500万年前である。
- ストーリーが前後
- 言語学班のドン・マドスンの詳細な報告は木星行きの船となっているが、ハント博士が地球にまだ滞在の際に行われた。
いや、挙げだすときりがないのでこの辺りにしておきますが、もはやホーガンの原作というよりホーガンの原作をベースに、新たにストーリー展開したアンソロジーと言っても差し支えないほどの変貌ぶりです。
現在連載中とのことなのですが、連載誌を見ていないためこの後どう収拾を付けるか想像できません。単行本でまとめられた状態では掲載巻が違う同じシーンなのに微妙に服装が変わっていたりするなど、一貫性にも不備が多数見つかります。
ホーガンの作品をコミックスで読みたかった人にはお勧めできません。しかし、星野之宣作品を読みたい人は問題ないでしょう。ワクワクさせる星野ワールドそのものです。
そういう状態ですのでお奨めでも、お奨めしないでも無く、という作品となってしまいました。
私が読む本ではいつものことなのですが、これって重版するのでしょうか。もう、あまり店頭で見かけなくなってしまっているのですが。
続巻の記事はこちら
星を継ぐもの02
息子もホーガンさんの大ファン。
ですんで、この「まんが」もさっそく買っておりましたよ。
で、息子の感想 …なんぎさんといっしょの点を言っております。
「ぜんぜんちゃう話になっている」
あたしは …あきませんわ やっぱオリジナルの「星を継ぐもの
」でっせ。
女房 …まんがだと「読んで」おります(笑)
原作を知らないと面白いと思うのですよ。純粋に星野之宣作品として見たらです。
でも原作ありの作品としては既に「原作」ではなく、「原案」レベル以下だと思うのです。世界観もへったくれも無い状態。
ホーガンの作品を知っている人にはこれは、もう、冒涜レベルと言われても仕方が無いのではないでしょうか。