年に一度の一般公開日に行ってきました、SPring-8。
蓄積リング施設外観
小雨のパラつくあいにくの天気でしたが、一年に一回しか一般公開が無いため、ちょっと遠いのですが足を伸ばして参加してきました。とにかく人気の施設。平常の実験が行われている日には想像もできないような人、人、人でした。
施設公開の詳細情報はこちらで参照してください(公開は終了していますので、公開前の記載と異なるものがありますがご了承ください)。
とりあえず8GeVの蓄積リングは上空から見ないと丸く見えません。地上から撮ると、上の写真のように何か長~い建物にしか見えずさっぱりです。
運転時は中は凄まじいX線の嵐になっていますので、ビームラインを含めて運転を止めているときだけに見ることが出来ます。今回の施設公開にあわせて運用のスケジュールをかなりやりくりしたそうで、苦労が偲ばれます。実験待ちの人からすれば、一般公開なんかどうでも良いから、オレの実験をさせてくれ!って所なのでしょうが(苦笑)。
今回は加速器見学ツアーに参加し、SPring-8の光の元の元からスタートしてみることが出来ました。まずは線形加速器(Linac)棟へ向かいます。
線形加速器電子入射部
ここがSPring-8の放射光の源である電子の発生部分です。左奥に2組ある電子銃から放出された電子を加速してシンクロトロンを経由し、最終的に蓄積リングで放射光を作り出します。
2組あるのは冗長化のためで、どちらか具合が悪くなっても実験環境を維持できるように切り替えて運用するようになっています。
電子銃(実物)
電子銃(カットモデル)
電子銃はバリウム含浸タングステンをカソードとして1000℃以上に加熱した上で170kVの高電圧を非常に短い時間(1nsあるいは40ns)印加し、出てきた熱電子をさらにバンチャー(入射部写真の朱色のコイル群)で電子を加速しやすいように塊にします。電子塊(バンチ)は1秒間に1回の割合で出力するとのこと。
電子銃電源
長い碍子と床から持ち上がった高さが高電圧を物語っている
集塊した電子を、今度は加速管で加速してやります。加速には高周波を用いるのですが、約2.8GHzの周波数で加速を行います。
加速管
加速部分
加速のための高周波は真空管の一種であるクライストロンで生成され、建屋2階に設置された発振変調器から導波管(銅製のパイプ)を通って加速管のコイルに流されます。
クライストロンと変調器
馬鹿でかい変調器(モジュレータ)とこれまた大きいクライストロンE3721と立体回路が延々と25セット並んでいます。高周波出力はMW単位。以前は一般公開の見学ルートにこのフロアを端から端まで歩けたそうなのですが、時間短縮のため省略との事。ちょっと残念です。
線形加速器終点
線形加速器で1GeVまで加速された電子は、ここでSPring-8へ向かうシンクロトロンへ流すか(右端の直線ライン)、ニュースバルへ流す(青い偏向磁石で曲げられた先)かを制御します。どちらにも流さない場合はビームダンプ(中央の丸い部分)に当てて破棄します。
線形加速器で1GeVに加速された電子はすでに光速の99%以上に加速されています。
この状態で偏向コイルなどを用いて向きを変えるだけでシンクロトロン放射によりX線が放射されるため、稼働中はこの建屋の中は立ち入り禁止になります。さらに2.8GHzで数MWの高周波出力が渦巻いていますので、巨大電子レンジの中と同じ状態に...。
線形加速器を出ると、次は蓄積リングに投入する8GeVまで加速を行うシンクロトロンです。
貴重な体験ですねぇ。
一般公開があるとは知らなかったです。
_φ(・_・ メモメモ
一般公開は年に一度です。
Spring-8は黄金週間あたりですが、他の施設も基本的に年に一回の一般公開日がありますので、気になる施設はチェックしておかれるのが良いでしょう。
「京」のある理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部も年に一度の公開がありますよ。計算機室には入れないようですが(涙)。